うさかめ英国至宝部

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俳優ベネディクト・カンバーバッチさんに関するあんなことやこんなことだけじゃなく様々にとっちらかったことを綴るブログです

ゴッホ~真実の手紙 ②

BBCが2010年に製作した『ゴッホ~真実の手紙』。

その日本語バージョンについて書いております。

 

①は、こちらです。

usakame221b.hatenablog.com

  

 

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ゴッホは都会(ハーグ)を離れ、オランダの農村地帯に移り住む。

「ここは最高の場所だ。幸せな人生とは自然と触れ合いながら暮らすこと。

 私は今、夕暮れの光の中で草を焼く人を描いている。

 この間は小さな小屋を見つけた。自然に囲まれた美しい小屋だ」

 

 

しかしゴッホは次第に孤独を感じるようになり

「人は一人では生きられない。孤独には耐えられない。

 人間にとって最も必要なのは、やはり家族なんだ」

 

孤独に耐えきれなくなったゴッホは、仲たがいしていた両親の元へ

帰ることを決心する。

 

「息子を家においてやり、絵を描かせることにした。

息子は自分が住む部屋を改装して欲しいと言っている。

寒さをしのげれば十分に住めるはずだ」と父親

 

「家族は渋々私を家に入れた。まるで野良犬を仕方なく家に入れるかのように。

 家に入れてはやるが、家族の邪魔をしたり、うるさく吠えたりするな、とでも

 言いたげだ。動物と同じ扱いだ」

 

家族との関係はうまくいってなかったが、ゴッホはこの頃から素晴らしい作品を

残すようになる。

 

この時期、ゴッホは自分の作品に徐々に色彩を取り入れ始める。

それは、風景画だけでなく人物画にも。

「今は人の顔を描いている。まだほんの練習の段階だが少なくとも30枚は描いた」

 

「これは農家の人々の絵」

『ジャガイモを食べる人々(1885年)』

 

「彼らは小さな明かりの下でジャガイモを食べている。

 テーブルの上の皿に手を伸ばしてね。その手は大地を耕した手だ。

 自らの手で育てた作物を食べる。彼らは自分たちの力で食べ物を手にしたんだ」

 

テオやゴッホの友人で画家仲間のラッパルトは、この絵を評価しなかった。

 

「友よ、君ならもっと上手く描けるはずだ。

 まず、後ろの女性の手が不自然だ。

 それにコーヒーポットを持つ この人物は取っ手をきちんと握っていないぞ。

 とすると、このポットはどうなっているんだ?宙に浮いているのか?」

 

「それから、この男性には膝がないし腕も短すぎる。おまけに鼻も変だ」

 

「もっと実物に忠実に描くべきだ。そう思わないか?」

 

 

ラッパルトからの手紙には、他にもこんなことが書いてあった。

「君の父上が亡くなったと聞き、私は君からの連絡を待っていたがこなかった」

 

ゴッホは手紙の中で、父の死については殆ど触れていない。

その関係は良くなかったにもかかわらず、ゴッホ父親の死にショックを受けていた。

 

 

彼は父親の聖書を描いた。

「ページが白っぽく見える聖書の絵だ。表紙は皮で、背景は黒。

 これを一日で描きあげたんだ」

 

父を亡くしたゴッホは、故郷・オランダを離れ芸術の都・パリを目指す。

1886年2月、ゴッホはパリに移り住み、弟のテオと一緒に暮らし始める。

ゴッホはパリの持つ芸術的な雰囲気に浸りながら新しい作品を生み出そうとした。

 

1886年(33歳) パリで弟テオと同居。

ロートレックゴーギャンらと知り合う。

印象派を理解しはじめ、色彩が明るくなる。浮世絵の影響を受ける。

 

 

「久しぶりに会った兄は、依然とずいぶん性格が変わったような気がするが

 私たちは仲良く暮らしている」とテオ。

 

「今の課題は良い肖像画を描くこと」

肖像画を描くためにゴッホが注目したのは、自分と同じオランダ出身の画家

レンブラントだった。

 

レンブラントは数多くの自画像を残している。

「これがレンブラント肖像画

 彼は自分を皺だらけで歯が抜けた一人の老人として描いている。

 最初は鏡を見て、自分の顔をスケッチする。

 そして、そのあとは暫く目を閉じて自分の顔を思い浮かべる。

 今度は鏡を使わずに記憶だけを頼りに自画像を描いていく。

 なんだか悲しくなるな。私もいつかは、このような老人になる運命なのだから」

 

ゴッホは最初、暗い茶色の絵の具で自画像を描き始めた。

しかし、彼の筆づかいや色彩は次第に変化していく。

当時流行っていた色に影響を受け、より軽やかでカラフルになっていった。

 

「1人の画家でも様々なパターンの肖像画を描けるということを示したい。

 それだけでなく、これまでになかった色彩の使い手にもなりたいんだ」

 

 

「兄ゴッホの絵は、まだ一枚も売れていないが他の画家と作品を交換することは

 あるようだ。彼は有名な画家のアトリエを訪ねて色々な画家と仲良くしている

 という」

 

しかし、人付き合いの苦手なゴッホは画家仲間たちとの交流には、あまり熱心では

なかった。

 

そしてゴッホと同じように、もう一人、社交的でない画家がいた。

のちにゴッホと深い関わりを持つようになるポール・ゴーギャン

 

この頃、ゴッホゴーギャンは日本の浮世絵に興味を持っていた。

 

「日本の浮世絵はカラフルで明るくて本当に素晴らしい。

 私は数えきれないほど沢山集めてしまったよ」

 

ゴッホは最初は浮世絵のコピーをしていただけだったが、やがて少しずつ自分流に

アレンジするようになり、ついには自分の作品に取り入れるようになった。

 

例えば『タンギー爺さん』と名付けられた作品の背景にも浮世絵をイメージしたものが

描かれている。

 

 

 

精力的に作品づくりに取り組む一方で、ゴッホには悪い習慣がついてしまう。

彼は浴びるほど酒を飲み始めたのだ。

その結果、健康が損なわれただけではなく弟テオからの信頼も失ってしまった。

 

 

「まるで兄の中に2人の違った人格が存在しているかのようだ。

 1人は才能豊かで優しいが、もう1人は自分勝手で冷たい人間だ。

 これまで兄のことを親友だと思ってきた。だが今はちがう」

 

 

2人の間には口喧嘩が絶えなかった。

そんな生活に嫌気がさしたゴッホはパリを離れる決意をする。

 

1888年(35歳) 2月、「日本の光」を求めて南仏アルルに移る。

 

「私はアルルに向かう列車の中から見える、その美しい風景に息をのんだ。

 それは日本の浮世絵に負けないほど素晴らしいものだった。

 太陽はキラキラと輝き、夕日が野山をオレンジ色に染めている。

 なんて魅力的なんだろう!」

アルルに着くとゴッホは一軒家を借り、すぐに製作に取り掛かる。

 

5月、「黄色い家」を借り、画家たちとの共同生活を企てる。

 

そしてゴッホの作品の色彩は、次第に色鮮やかになっていった。

 

「私は35歳になって初めて ここアルルの地へやってきた。

 できることなら25歳の時に、この地に来たかった。

 10年前の私は、暗い色の絵ばかり描いていたから。

 もう浮世絵は必要ない。なぜなら、ここには同じぐらい美しい風景が

 広がっているから」

「今年は、この地で大いに作品づくりに励みたいと思う」

 

 

アルルに来てから前向きになっていたゴッホだが、1人きりの寂しさが

彼の精神を少しずつ蝕んでいく。

「誰とも口をきかないまま何日も過ぎていく。

 誰かと話すのはレストランで食事を頼むときぐらい。

 私は、こんな風に1人ぼっちで過ごすのがとても不安だ」

 

 

そしてゴッホは手紙を書く。

 

「我が友 ゴーギャン

 

 アルルに家を借りた。もし君が南フランスの風景を描きたいと思うなら

 そして、私と同様、作品作りに没頭したいと思うなら、ここはまさに

 うってつけの場所だ。

 もしよかったら、ここで一緒に製作に励まないか」

 

「私の弟に、毎月1枚の絵を渡す。それが家賃の代わりだ」

ゴーギャンと同居することを願って、大輪の向日葵でアトリエを飾った。

 

 

「これは私の寝室を描いたもの。最終的にはステンドグラスのような色をつけたいと

 思っている。なかなか面白い作業になりそうだ」

 

1888年10月、ゴーギャンがアルルへとやってくる。

 

数日後、同じテーマで作品を描こうと2人で古代ローマ時代の墓地に出掛けた。

ゴッホは実際の景色を見ながら描き、背景には工場も描かれている。

一方ゴーギャンは、記憶をもとに作品を描きあげていった。

 

ゴーギャンが時間をかけ念入りに完成させている間に、ゴッホはさらに2枚

別の絵を仕上げた。

 

ゴーギャンは彼自身も気づかぬうちに、やり方を少し変えるべきだと

 教えてくれた。

 そして私も今、記憶をもとに書いている。

 これまでの作品を題材にして、思い出しながらね」

 

これは、ゴッホが記憶をもとに書いた作品の1つ。

そこにはゴーギャンの影響が強く感じられる。

 

「巨大なレモンイエローの太陽。黄緑色の空とピンク色の雲。

 畑は紫色で、人物と樹は紺色だ」

 

しかし、記憶だけで描く方法はゴッホには合わなかったようで、彼はすぐに

元の描き方に戻った。

 

 

「最近2枚の絵を描いた。

 1つは赤いタイルの上に置かれた黄色い椅子。もう1つは赤と緑に染まった

 ゴーギャンの椅子。ゴーギャンの椅子には小説とロウソクが置いてあるんだ。

 なかなか面白いだろう」